小女郎ヶ池のこと
鞍馬の奥、池ヶ谷というところに小女郎ヶ池(こじょろうがいけ)という池があります。名前の由来に、こんな話が伝わっています。
むかし、鞍馬のある家に小女郎という女中さんがいました。朝いちばんの仕事は、家で飼っている牛馬の餌にする草を刈ること。峠の下の池のほとりには、みずみずしい草が生えていたそうです。
朝が早いので、髪を整える間がありません。小女郎さんは櫛をたもとに入れて出かけ、草を刈り終えると池の水を鏡にして髪を梳き、身なりを整えて帰りました。それが毎日のことでした。池の底に棲む大蛇に見られているとは知らずに。
ある年の夏、鞍馬に大雨が降りました。谷という谷から水が流れ込んで池があふれ、土手が崩れて、水はどっと鞍馬川へ流れ出しました。そのとき、川上から大きな丸太のようなものが「小女郎、小女郎」と呼びながら流れてきたといいます。
小女郎さんは呼ばれるまま「はいはい」と答えて丸太に飛び乗り、そのまま川を流されていきました。丸太と思ったのは、池に棲んでいた大蛇でした。
それからこの池を、小女郎ヶ池と呼ぶようになりました。いまでもそのあたりは両側から山が谷に迫り、湿気の多い、あまり気持ちのよい場所ではありません。
土地の古老から聞いた話です。